間もなく豊洲マラソンです。参加予定の方は自己ベストを目指して、毎日トレーニングに勤しんでいることと思います。ぜひ頑張ってください。
とはいえ、無理は禁物。レース前にケガをしてしまっては、元も子もありませんからね。
そこで今回は、オーバーワークによるケガを防止するため、プロのバスケットボールプレイヤーと柔道整復師の対談を企画しました。
スポーツにケガはつきものですが、それをアスリートはいかに予防しているのか。
市民ランナーにも参考になる話題満載でお届けします。
早瀬選手がクラン整骨院で治療を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
三原翔院長(以下、三原):私も学生時代にはバスケットボールをやっていたのですが、共通の知人から3人制バスケのプロ選手が治療難民になっているという話を聞きました。それをきっかけに早瀬選手を紹介してもらって、治療を担当するようになりました。
早瀬敏高選手(以下、早瀬):最近バスケット業界もBリーグが発足して以来盛り上がっていますが、以前はそれほど注目度が高くなかったので、チームによってはトレーナーがいないことも多々ありました。なので身体の疲れを残したまま次の試合に臨むことも多く、それが続いて悪循環になっていました。そんな時に紹介してもらったのが、こちらのクラン整骨院でした。
三原:バスケットボールって地面との摩擦が大きいんです。キュっと止まって、また走り出したり。そして右に行こうとして左に、左に行こうとして右にフェイントをかけるなど、頻繁に反復の動きをしているので、気が付かない間に骨の一つひとつに負担がかかっているんです。特に3×3は格闘技みたいにぶつかってくるので、5人制よりも激しい動きが要求されます。すると着地時に膝を痛めたりすることもあるでしょう。しかし選手たちは、痛くても我慢してしまうんですね。放っておけば治るだろうと。でも、それが怖いんです。スポーツをする人に共通していえることですが、疲れや痛みを蓄積したまま放置しておくと、疲労骨折を起こしてしまいます。最初は筋肉痛の延長みたいな鈍い痛みですが、その痛みが3日以上取れなかったら、疑った方がいいですね。もし放っておくと重症になるケースもあるので、ぜひ気を付けてください。
早瀬:3×3の試合時間は10分間なんですけど、その間ずっと全力で動き回っているので、試合後しばらくは立ち上がることもできない状態になります。でも以前は、ケアすることなくそのまま翌週の試合に臨んでいたので、疲労はどんどん蓄積されていきました。もちろん、足などが痛む時もありましたが、試合を欠場することはできません。試合中は、大勢のお客さんを前にしてアドレナリンが出まくっているので、その時は痛みを感じないのですが、試合が終わるとその反動で、全身に痛みが走る状態でした。
三原:反復的な動きによる痛みなので、その後に休養がとれれば回復できるんですけどね。プロの選手になるとシーズン中は毎週のように試合があるから、休むわけにはいかない。試合をすることがプロの仕事ですから、つらいところですね。
早瀬:本当は休みたいんですけど、スケジュールに追われていますから。まずは試合を優先させて、身体のケアは後回しになりますので、疲れは徐々に蓄積されてきます。しかも3×3の試合会場はコンクリートの上にスポーツコートを敷いた上でやることが多いので、より足に負担がかかってしまいます。ショッピングセンターのフロアなどでやることもありますし。そんな会場で試合した後の足の痛みは、半端ないですね。
痛みを和らげるために治療を受けて、その後のパフォーマンスに変ったことはありますか。
早瀬:僕は日本でもトップクラスの跳躍力を自負していて、黒人選手を相手にしても負けないくらいの高さまで飛んでいくんですけど、それが治療を受けた次の試合では、自分がいつもより高く飛んでいるなというのが、実感としてわかります。体感レベルが違うんですね。いつもと同じタイミングで飛んだダンクシュートが、違って見えるんです。ゴールが低く見えるから、少し空中で待っておこうみたいな感じで。滞空時間も長いですし、飛んでいる高さもすごいので、最初は自分でも驚きました。ただしこれも疲労がたまってくるとパフォーマンスが落ちてくるので、今では疲れを感じたらすぐに治療をしてもらうようにしています。
三原:私たちは、様々なスポーツ選手のケアを行っていますが、実際には一緒にコンディションを作りあげていくんですね。筋肉はほぐせばいいのではなく、最高のパフォーマンスを発揮してもらうために、その日のコンディションに合わせて絞めたり緩めたり、その都度選手の要望を聞きながら、選手の身体と話をしながら一緒に仕上げていきます。いわゆる車のメンテナンスと似ていますね。
早瀬:以前は、ストレッチの先生が試合に同行してくれていたのですが、その時は試合が始まったときに、身体が全然いうことをきいてくれない状態になっていました。走ってもすぐに止まれないし、シュートを打っても入らない。それが何でそうなっているのかわからなかったのですが、ただ筋肉をほぐせばいいのではないというのは、身をもって体験しました。
三原:早瀬選手の筋肉は普通の人とは違ってやわらかく、瞬発力が発揮できる筋肉を持っています。ですから筋肉を緩めすぎてしまうと、逆にバランスを崩してしまって、当たり負けしてしまうこともあるので、その辺に気をつけながら治療しています。また私たちは、コンディションを整えることと同時に、疲労がたまる箇所や痛みやすい箇所の骨と筋肉を解剖学的に評価・分析して、痛みが発生しなくなるためのトレーニング方法などの提案も行っています。
アマチュア選手も痛みを我慢してトレーニングを続けるケースはよくありそうですね。
三原:ランナーはストイックな方が多いので、目標を立ててそれに向けてきっちりトレーニングをしますが、その過程で多少痛みを覚えても、無理して走ってしまいます。やはり無理して頑張るのが一番良くないですね。それが蓄積されるのが怖いんです。また、自分の足の骨のカタチを見たことがない人が殆どです。左足と右足での役割の違いや形状の違いに気付いていない方が、いきなり長距離を走り出したら?それは怪我するために走るようなものですね。ウェアや靴にこだわる事もわかりますが、まずは解剖学的に足の構造等をしっかり理解してからトレーニングしていただきたいです。それには当院のような専門の施設や、今では色々なスポーツショップでも足の測定をしてくれます。まずそこから始めましょう。怪我を予防する走り方、それを理解することで記録的にも距離的にも結果が伴ってくると思います。
早瀬:アマチュアの人たちは、ウォーミングアップを軽いランニングから始めることがありますが、あれもよくなさそうですね。いきなり走り出すわけですから。それよりも、足を痛めないために自分でできる、効果的なストレッチとかはありますか。
三原:いろいろありますが、ひとつだけやっていただきたいのが、股関節のストレッチです。股関節は、球関節といって自由な方向に360°動かせるのですが、普段は前後の動きしか使いません。なので、左右に動かすストレッチをしていただくといいですね。よく股関節のためには貧乏揺すりがいいといわれていますが、前後左右によく動かすことが大切です。足首も大事なのですが、細かい靱帯や筋肉が数多く付いているので自分ではほぐせませんので、セルフケアをする場合は、股関節を入念にストレッチすることで足首から膝、腰までの痛みを予防することができます。市民ランナーの方も、ぜひ参考にしていただけるといいですね。
クラン整骨院 院長
三原 翔さん(みはら・しょう)
1985年生まれ。東京柔道整復専門学校を卒業し柔道整復師の国家資格を取得。整骨院にて11年間の臨床を経験し、平成29年4月にクラン鍼灸整骨院を開設。オリンピック選手やプロアスリートの帯同や施術も行っている。
3人制プロバスケットボール選手
早瀬 敏高さん(はやせ・としたか)
1987年生まれ。学校卒業後は社会人チームからのスカウトを断って、美容師の世界へ。4年後に趣味として再開したバスケットが本格化してプロに転向。2017年シーズンは、3×3 PREMIER.EXEのSEALS.EXEに所属している。
末永くスポーツを楽しむためには、無理は絶対に禁物。やはりメディカルチェックって大事なんですね。少しでも身体に異常を感じたら、すぐに専門家に診てもらうことを心掛けましょう。
今回ご登場いただいたクラン整骨院は、豊洲マラソンでメディカルブースを出展される予定です。テーピングサービスやレース前のストレッチ、レース後のケアサービスなどを行いますので、参加される方はぜひおたずねください。
クラン整骨院・鍼灸院
中央区築地3-1-1 築地FAビル3F
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10:00~20:30最終受付(日曜・祝日18:00最終受付)
㊡第1月曜日・年末年始
text / takao shinbori
Photo/ Hiroaki Katsumata